町中華を再発見する 「町中華とはなんだ ~昭和の味を食べに行こう~」

タイトルに惹かれてこの本を買ってしまい、「町中華」が頭から離れなくなってしまった。

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この本は、「町中華」とは何かを解説する書ではない。

町中華」とは何かを考える書である。

町中華」とは何なのか

著者の町中華探検隊は、「大陸」というお店が閉店したことをきっかけに、町中華についての調査研究を始める。

「『大陸』亡き後発見された新大陸は、そこにずっとあったのに存在すら無視されてきた世界。店主の腕と発想で自由な店づくりをしてきた。成長期があり、乱立の時代を経て、衰退期にさしかかっているものの、思い思いの営業をしている。現存する店たちは創業数十年は当たり前の歴戦の勇者たち。でかい相手だ。ぼくごときのモノサシで計ってはいけない。
新大陸は広くて奥が深い。ゆっくり歩いていくしかないのだ。」(85頁)

町中華」の定義は難しく、本書を読み通しても最終的な定義は示されない。町中にある大衆的な中華料理屋のことではあるのだが、中国人がやっているような本格的な中華料理店は町中華ではないし、ラーメン屋はラーメン屋であって町中華ではない。
当初は三種の神器(カツ丼、オムライス、カレーライス)が揃っている店だとされていたようだが、その後、カツ丼はないが明らかに町中華である店に遭遇してとまどう。定義が先にあるのではなく、町中華が先に存在しているのだ。これをどう定義すべきなのかも含めて、町中華とは何なのかを考えるのがこの本である。

急に「町中華」が気になり始める

言葉とは恐ろしいもので、「町中華」というマジックワードを一度聞いてしまうと、突然、それまで気にもとめていなかった「町中華」が目につくようになる。

町中華を気にして街歩きをすると、とたんに見えてくるものなのだ。」(42頁)

町中華がなくなる前に

町中華は、衰退しつつある。町中華探検隊の活動は、この貴重な存在がすべて消えてしまう前に、町中華を調査研究し、記録に残そうという、非常に有意義な活動である。

「ぼくたちはこれまで、今日は新宿とかエリアを決めて、そこにある町中華をチェックしてきた。それはいいと思うんだよ。で、どこに入ろうかなとなったとき、おいしそうな店を選ぶ。これは間違っている。まずそうな店にも入って、まずいのに存続してきた理由を考えるべきなんだ」(34頁)

町中華の醍醐味1:どうかしてるボリューム

本書に書かれている活動内容は、どれも、じわじわと面白い。
町中華の特徴の1つは、たぶん、ボリュームなんだろう。普通の値段で驚きのボリュームを出すというのがあるから、学生やサラリーマンなどに支持されて長年存続してきたに違いない。カツ丼はどんぶりにぎしぎしご飯を詰めるし、「(小)」と言いながらあり得ないボリュームで出だすのだ。

「先日も新たな発見をしたばかりだ。中野坂上の『ミッキー飯店』で食べたラーメン+中華丼(小)のセットメニューに心が揺さぶられた。(小)のはずの中華丼が、どうかしているくらいボリュームがあり、思わず心でつぶやいた。
このセット、パンチがあり過ぎる……。」(86頁)

町中華の醍醐味2:微妙なさじ加減のメニュー

メニューの微妙なさじ加減も町中華のよいアクセントに違いない。

たとえば「半ちゃんラーメン」という響きはすごくいい。ただのラーメンとチャーハン半分セットなんだけれども、それでも「半ちゃんラーメン」は「半ちゃんラーメン」で1つのメニューあり、ラーメン&チャーハン半分と「半ちゃんラーメン」は別物なのだ。

チャンポンのくだりはとても面白い。チャンポンといえば例の長崎チャンポンを思い浮かべてしまうが、大宮飯店の「ちゃんぽん」は、なぜか具だくさんのあんかけスープで、塩味ベースで化調多めの、長崎チャンポンとは全く異なる料理だという。他の町中華の「ちゃんぽん」も、長崎チャンポンとは全然異なるという。三ノ輪の光陽楼のチャンポンはどう見てもタンメン。東長崎の公楽のおチャンポンは、あっさり塩味で白菜かまぼこ豚肉あさりシメジ溶き卵などが入っている。
その店がチャンポンだと思う料理がチャンポンなのだ。

「チャンポンっていうのはね、その店によって違うんだよ」(191頁)

町中華の醍醐味3:まずいのにまた行ってしまう

美味くない店も魅力がある。美味くなくても、行きたくなくても、行ってしまう店はたしかにある。

「こういう『まずいのに多くの人から愛されてる店』のことを、ボクは『素敵なひどい店』と呼んでいる。」(197頁)

「『今回もまずいんだろうなぁ……』と思いながら足を運び、案の定『やっぱりまずかったぁ』になって、その時は『もう二度とくるか』と固く心に誓うのだが、また数日すると行ってしまう。」(199頁)

1度読むと「町中華」を忘れられなくなる

この本を1度読んでしまえば、地元の「町中華」が目につき、気になり、そして入ってしまうことは間違いない。
町中華はもはやいつ閉店してもおかしくありません。
みなさんも地元の昭和遺産「町中華」を今のうちにエンジョイしましょう。