節約のクセがすごい! 「節約の王道」

これは節約に役立つ本ではない。

この本は、お金の使い方に関する独特のこだわりを拗らせてしまったとある日本文学者が、その独特のこだわりを告白し、読者から「考え方のクセがすごい!」と突っ込んでもらうために書かれた本である。
それは、以下の写真を見れば明らかである。

https://www.instagram.com/p/BPRK7aPlpDS/

この風貌で「節約の王道」って!
ダメ押しのように、裏表紙裏にも、著者の顔写真が掲載さている。

https://www.instagram.com/p/BPRK5eKlDGB/

この本に節約に役立つことが書かれているはずがないではないか。

めっちゃクレカ使う

著者のリンボウ先生のメインのクレジットカードはJALカードだという。

私のメインカードは、JALカードです。つまり、買い物をすればするほど、マイレージが貯まる。だから、支払いのほぼすべてをJALカード一枚に集約させています。どこかで何か食べるのでも駐車場の料金でも、すべてこれで支払う。
そうすると、お買い物マイレージがどんどん貯まるから、私の妻などは、これで何度もイギリスやアメリカへ行っています。航空運賃なんて払ったことがありません。今もビジネスクラスでロンドンを往復できるくらい貯まっています。これこそ、最大の節約ではないでしょうか。(50頁)

ここで年会費がどうだとかポイント還元率がどうだなどと言うのは野暮である。

ビジネスクラスでロンドン往復するのに必要なマイルは8万5000マイル。
他方でJALカードで貯まるマイルは利用額の0.5%。
マイルの有効期間は3年。
そうすると、8万5000マイル貯めるためには、3年のうちに17000万円をJALカードで使わなければならない。
3年で1700万円、月額平均47万2222円。

もっとも、ゴールドカードとかだと利用額の1%のマイルがつくので、月額平均は23万6111円で済む。

「節約の王道」というタイトルの本にこれを書いてしまう。
これは、リンボウ先生から読者への挑戦状であると考えるほかない。

ところで、リンボウ先生がすべての支払をJALカードに集約していると思ったら大間違いである。
先生がそんなハイリスクなことをするわけがない。

インターネットで物を買う場合もリスクを伴います。カードの個人情報をインターネット上で入力するわけですから、その情報の悪用や漏洩がいつ起こっても不思議ではありません。だから私は、ネットでの買い物には、メインカードのJALカードは使わないことにして、ネットショッピング専用に、まったく別のカードをつくりました。(51頁)

クレカを使うと支出が20%増えるという研究結果があるとか、そういうレベルの問題ではないのだ。

嫌いな飲み会には行かないが好きな蕎麦屋には連れて行く

リンボウ先生は、「飲み会」などという馬鹿げたものには一切参加しない。
チェーン店の居酒屋で開催される飲み会など、飯はまずいし、何にも楽しくない、という。

そのうえ、ほかの人を考えずに自分だけガブガブと酒を飲むやつがいて、会費制だと、そういうやつの飲み代まで払わされる。私はものも食べない、酒も飲まないのに、行けばその会費を払わざるを得ない。これほど嫌な出費はないと思うわけです。(76頁)

先生は酒が飲めないが、決して酒が飲めないから飲み会に参加しないわけではない。
酒が飲めないから嫌なのではなく、そもそも飲み会などというものは時代遅れなのだ。

若い人たちも、まったく飲まないというわけではないと思います。ただ、「職場の飲み会に参加する金と時間があったら、自分のために有意義に使いたい」と、そう思っているのではないでしょうか。つまり、「飲み会」のように大勢で群れて飲むというスタイルは、もはや時代遅れになっているのだと思います。(78頁)

ところで、先生も若い人に食事を奢ることはある。

今は、私が若い人たちを連れてご飯を食べに行く立場になりました。もちろん、行くとなれば彼らにお金を払わせたりはしませんが、一人ひとりにそんなに高いものはご馳走しません。蕎麦でも食べに行こうかという程度で、せいぜい一人三千円くらいまでです。
その代わり、そこらの店でいい加減に食べたりはしません。自分が気に入って日ごろからよく行っている、すこぶるおいしい蕎麦屋へ連れて行くのです。
蕎麦一杯など高くたって千円くらいなもので、五人に奢ったとしてもたかだか五千円です。それでも、そんなふうにして奢ってもらえば、若い人たちには、リンボウ先生行きつけの店で、すごくおいしい蕎麦をご馳走になった」と印象に残ると思うのです。(79頁)

蕎麦のウマいマズいが分かり、「先生の行きつけのお店に連れて行ってもらった!すごくおいしい蕎麦だった!」と思ってくれるような若者に囲まれている幸せは、先生の人徳によるものなのだろう。

飲み会は嫌いだから行かず、若い人に奢るときは好きな行きつけの蕎麦屋に行く。
飲み会は時代遅れだし、行きつけの蕎麦屋に連れて行けば若い人たちは喜ぶ。
時代は常にリンボウ先生の後ろを追いかけているのだ。

飛行機は一か八かだから危ない

リンボウ先生はどこでも車で行く。

私は車が好きで、どこに行くにも車で行きますが、それはもっとも安全、快適、格安で行くための手段です。「車は安全じゃないでしょう」と言う人がいるかもしれませんが、自分で運転している限りは、自分でコントロールしていくらでも安全に行くことができます。私はすこぶる安全運転なので何の問題もありません。
そこへいくと、飛行機というものは一か八かです。自分では気をつけようがない。墜落する確率はほぼゼロに近いなどと言いますが、それでも、飛行機に乗るときは誰もが命の危険を感じるはずです。精神的な抑圧を感じさせるという意味では、飛行機が一番嫌な乗り物かもしれません。
一方、新幹線は、これまで無事故で未だ死者を出したことがないと言いますが、事故以外の面での不安があります。ああやってぎゅうぎゅうにいろいろな人が乗っている車内というのは、この新型インフルエンザの時代、どんな病気をうつされるかわからないというリスクがあるのです。(108頁)

「考え方のクセがすごい!」と感動すべきところである。
ここで「いやいや、飛行機事故での死亡率は・・・」などと反論してはならない。
先生は、世の中で言われているような常識とらわれてはならない、と伝えたいのだ。
そもそも、空を飛んだら危ないに決まっているではないか!

学生はバイト禁止

アルバイトなどといったコスパの悪い行いはもってのほかである。

うちでは、子どもたちにアルバイトをすることを許しませんでした。親が学費を払っている間はアルバイトをしてはいけない。これは私のポリシーです。(166頁)

学生時代は有効なことだけをやっているわけではありません。色恋沙汰もあれば、友達とのけんか、悪い遊びなどもあります。仲間と山登りに行ったり、スキーに行ったり、いろんなことをする。
そういうことを大人になってからやりたいと思ってももうできません。一人前の大人になってしまったら、そういうことを自由にする時間はもはやないわけです。(168頁)

えっ、大人でも山登りとかスキーとかしてるって?
そんな大人は一人前の大人とはいえない。
一人前の大人であれば、そんな時間があるはずがない。

幸いなことに、私の親も同じ考えだったので、私も兄もアルバイトというものをしたことはありませんでした。私の父もしたことがない。代々そうなのです。だからといって、社会に出てから困ったという経験は一度もありません。社会勉強になる、とよく言いますが、アルバイトで知ったことなど、何でもないことなのです。それよりもアルバイトでは分からない、もっと大きなことを、自由のなかでつかんでほしい、それが私の信念です。(168頁)

そう、リンボウ先生はアルバイトなどしたことは一度もないけれども、アルバイトで得られることなど大したものじゃないのだ。
アルバイトなどする時間があったら、山登りにいたりスキーに行ったりして遊び、アルバイトでは分からない、もっと大きなことをつかむべきなのだ。

林家の子は大変である。

拗らせた男のクセがすごい生きざま

このように、この本は、独特の考え方を拗らせてしまった著者が、拗らせついでに自身の生き様を告白してしまった拗らせ本である。

この本を読んで節約に役立てようなどと思ってはいけない。

リンボウ先生に興味のある人におすすめである。