アラフォーおっさん談義と雑学豆知識を堪能する「どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた」

本書は、多方面で個性的な活動をしている変わったアナウンサーの吉田尚記氏と、東大医学部卒でハーバードの大学院を修了し予防医学等を研究する超エリート研究者の石川善樹氏が、「幸せ」について対談した本である。

基本的にはアラフォーのおっさん2人が幸せについて持論を披露し合っているだけなのだが、途中でちょいちょい出てくる石川氏の豆知識がなかなか面白い。

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ちょいちょい出てくる豆知識

感情のチェックリスト

石川氏は、以下のような感情の分類を紹介する。

ネガティブ:怒り、イライラ、悲しみ、恥、罪、不安/恐怖
ポジティブ:幸せ、誇り、安心、感謝、希望、驚き

このチェックリスト、実際にやってみるとけっこうおもしろいんです。自分が特定の感情に偏りがちなことがわかるので。(53頁)

感情は思考に影響するので、できるだけ偏らずに様々な感情を持つようにした方がいいというのが,石川氏の持論だ。たとえば、不安や恐怖を感じると冷静な思考ができるという。たしかに怒ったりイライラしたり、あるいは安心したり感謝したりしてばかりでは,冷静な思考はできなさそうだ。

自分でチェックリストをやってみても、たしかに偏っていることが分かる。
「怒り」「恥」「罪」などは、最近ほとんど感じたことがない。「誇り」「安心」「感謝」「希望」「驚き」も、ないかも知れない。ネガティブなものは「イライラ」か「不安」、ポジティブなものは「幸せ」か「希望」に偏っている気がする。もっと他の感情も持った方が、考え方のバリエーションも広がるかも知れない。
手始めに「恥」の感情を持つために恥ずかしいことをしてみようと思う。

元気があれば景気も良くなる

景気が悪くて人々の元気もない、というようなセリフについても、面白いうんちくが披露されている。経済が良くなれば元気になるのか、元気になれば経済が良くなるのか。常識的には前者のような気がするが、ところがどっこい、石川氏はこう言う。

そういう研究が実際あるんですよ。みんなが元気だから経済がよくなるのか、経済がいいからみんなが元気になるのか、という。結果としては完全に気分の方が最初だということがわかっています。まずは人が元気になる、そのあとで経済がついてくる。(47頁)

なんと、元気になれば経済が良くなることが、研究の結果としてすでに完全に明らかになっているというのだ。経済を良くするためにどうしたらよいかとあれやこれや考えていたのがバカみたいだ。経済を良くする方法を考えるのではなく、元気になる方法、元気にする方法を考えるべきだったのだ。

問いの設定自体が悪い

「自分は何がしたいんだろう」などと、答えのない問いをぐるぐる考えてしまう人も多いと思うが、そんな悩める人々に対するゴールデンアドバイスも本書では示されている。

自分って何がしたいんだっけ、と考えて何も浮かばないってことは、「問いの設定自体が悪い」可能性がある。僕ら科学者はアイデアが浮かばないとき、だいたい問いの設定が悪いって考えるんです。(159頁)

この発想はなかった。悩める人々もそうに違いない。でも、仕事など、自分自身以外の問題に対処する場合は、よくやっているかも知れない。そういう質問をするのが間違ってるよ、ということはよくある。自分自身についても同じアドバイスをすべきなのだ。

100年前はみんなIQ70

いきなり以下のような面白い話も出てくる。

実は人類の平均IQ(知能指数)ってけっこう上がってるんですよ。100年前の人たちのIQを現代の基準で判断すると,だいたい70くらい。今なら知的障害に分類されるかどうかという数値なんです。(180頁)

なんと!100年前はIQ70の人ばかりの世の中だったのだ。
想像してしまうと、もはや「昔はよかった」的なことは本気では言えない。
100年後から見た今もそういうふうに見られるのかも知れないけど、逆よりはずっといい。

世の中はどのようにでも見ることができる

石川氏は、世の中はどのようにでも見ることができるという。多様な見方をするための知識が大事で、「知は力なり」なのだ。
たとえば、「日本はもうダメだ」的な悲観論も、以下のように見ることだってできる。

日本の経済状況を測る指標といえばGDPが有名ですが,日本ってGDPは過去20年変わってないんですよ。ただ「経済複雑性指標」では世界一なんです。(196頁)

「経済複雑性指標」は、どれだけ多様なものを生み出しているかの指標であり,その国の中長期的な経済状況をもっとも反映するといわれているそうだ。それが世界一である日本は、中長期的な経済状況も世界一有望だともいえる。
1700年ころから江戸時代が終わるまでの150年間も、人口はほとんど変わっていないが、教育文化の質は高まっていて、これが明治以降の飛躍につながった。今もGDPは変わっていないが、質は高まっていて、同様に次の飛躍につながるのだ・・・と、こう解釈することもできるという。

こういうふうな様々な見方ができるようになるためにも、知識は大事だということのようだ。

幸せとは何なのか

本書には、もちろん、本題である「幸せ」についても、いろいろとタメになりそうなことが書かれている。
ただ、「どうやったら幸せになれるか」という話よりも、「そもそも幸せって何なのか」という話の方が多い。本当の問題はそれなのだということだろう。

「幸せ」に関して、石川氏は、「いつかこうなりたい」と幸せを先延ばしにするのはよろしくないと言う。

自分はどういう人間でありたいんだろう,ということを意識して普段から考えていないと,どんなに成功や栄光を手にしても幸せにはなれない。(150頁)

つまり,To be - 「こうなりたい」という欲望じゃなくて,自分がどのような状態でいたいか考えることが大事なんじゃないですかね。(151頁)

ちなみに、石川氏が研究する予防医学は「人がよりよく生きる」ことを研究するものだが、その研究のゴールも、「どうなる」ではなく、「どのような状態である」という形で設定されているようだ。

僕は「予防医学」-人がよりよく生きるためにどうすればいいのかを考える学問-を研究しているんですが,その究極のゴールは「朝ワクワクして目が覚めて,夜満ち足りた気持ちで眠れるか」なんです。(19頁)

問いの設定自体が悪かったのだ。「何になりたいか」と考えるのではなく、「どのような状態でいたいか」と考えるべきだったのだ。

また、石川氏は、本当にやりたいことは40才くらいにならなければ分からない、40才くらいでやりたいことが見えてきて、50才くらいで決意が固まるのだ、と言う。
ノーベル賞をとるような科学者も、コアとなる研究を始めるのはだいたい40才くらいだという。また、シリコンバレーでも、若者の企業は死屍累々だが、50才くらいの企業の方が成功率が高いという。

つまり40くらいにならないと,本当に何がやりたいかはわからない。(171頁)

アラフォーのみなさんはあせる必要はない。まだまだこれからなのだ。アラフォーのおっさん2人が言うんだから間違いない。

幸せについて考えたい方にも、豆知識が好きな方にもお勧め

このほかにも、本書には、人の意思決定の総量は限られている、とか、付き合いたい女性には将来の話だけをするべき、など、雑学というか豆知識みたいな話が、ちょいちょい出てくる。石川氏の知識の豊富さがひしひしと伝わってくる。
「幸せ」について真剣に考えている方にも、アラフォーのおっさん2人の幸せ談義をゆるく追いながらちょいちょい出てくる豆知識を楽しみたいという方にも、お勧めの本である。