自分で考えて自分で決めて生きていく「武器としての決断思考」(by 瀧本哲史)

本書は、瀧本哲史氏が若者に意思決定の方法という武器を伝授するという趣旨の、有名な本である。

 
 
 
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意思決定が必要な時代である

正解はない

今は、ひと昔前と違い、決められたルートを進めば安泰という時代ではなくなった。
今後のことは誰にも分からない。正解はない。
自分がどうするかは、自分で考えて、自分で最適解を導き出し、意思決定していかなければならない。

こんな時代に生きる私たちは、過去のやり方が通用せず、未来予想もうまくできないなかで、自分の人生や家族の将来を見据えながら、ひとつひとつ現時点で最善と思える「意思決定」を行っていかなければなりません。

(p14)

また、今の世の中には、特定の分野について最先端の知識を兼ね備えたエキスパートはたくさんいるが、全体を見て総合的な判断を下せるプロフェッショナルはあまりいない。意思決定ができるようになることは、プロフェッショナルとして今後生き残っていくためにも重要である。

適切な意思決定をするのは容易ではない

意思決定が重要な時代だが、適切な意思決定をするのは簡単ではない。
人間の意思決定は、バイアスにとらわれ、ゆがみやすい。

ついつい、慣れているものと不慣れなものであれば、慣れているものを選んでしまう。
過去に経験したことがあるものと経験のないものであれば、経験したことがあるものを選んでしまう。
過去の経験をことさらに重要視してしまい、未来に起こりうる別の可能性は軽く見積もってしまう。
十分な情報が集まっていないのに、限られた情報だけで性急に判断してしまう。
判断が難しいときには、究極の楽観論に飛びつくか、究極の悲観論に飛びつくかしてしまう。
これまで費やしてきた費用や労力をなかなか切り捨てられず、サンクコストに引きずられた判断をしてしまう。

このように、適切な意思決定をするのは容易ではない。
だから、意思決定の方法を身につける必要がある。

意思決定に使えるディベート思考

正解がない中で最適解を導き出す意思決定には、ディベートの方法が使える。

最初に、何について意思決定するのか、テーマをよく考える必要がある。
テーマはYesかNoか二者択一で明確な結論が出るようなものが向いているので、そこまで問題をブレイクダウンして具体化した方がよい。
また、そのテーマが議論に値するものかどうかもよく考える必要がある。どうでもいい議論に時間をかけることは時間の無駄だ。

メリットの3条件

テーマを設定したら、メリットとデメリットを考える。

「ある行動をすべきか否か」というテーマで考えた場合、メリットは、以下の3条件を満たすものである必要がある。

メリットの3条件

①内因性(なんらかの問題があること)

②重要性(その問題が深刻であること)

③解決性(問題がその行動によって解決すること)

(p103)

なんらかの問題があって、それが重要・深刻な問題であって、その問題がその行動によって解決する、ということを言えればよい。

デメリットの3条件

他方で、デメリットについて、以下の3条件を満たすものである必要がある。

①発生過程(論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)

②深刻性(その問題が深刻であること)

③固有性(現状ではその問題が生じていないこと)

(p111)

その行動をとると別の新たな問題が発生して、その問題が重要・深刻で、その行動をとらなければその問題は生じない、ということを言えればよい。

メリット・デメリットを反論にさらす

メリットとデメリットを挙げたら、それぞれに対して反論を試みる。
反論に耐えた根拠のある主張が正しい主張だからだ。

「正しい主張」の3条件

①主張に根拠がある

②根拠が反論にさらされている

③根拠が反論に耐えた

(p158)

反論にあたっては、推論の部分を検証するのがポイントとなる。
推論とは、主張と根拠の間にある前提とした考え方・論理・思い込みのことをいう。
推論には、①演繹、②帰納、③因果関係がある。

①演繹は、
1. AはBである。
2. CはAである。
3. よって、CはBである。
という三段論法の考え方である。
これに対しては、そもそも前提である「1. AはBである」が間違っていたり、必要条件と十分条件を混同していたり(1. すべての教師は教員免許を持っている、2. Cさんは教員免許を持っている、3. よってCさんは教師である、は成り立たない〔教員免許は教師であるための必要条件ではあっても十分条件ではないので〕)、などの反論が可能であることが多い。

帰納は、いくつかの個別事例から、一般的・普遍的な結論を導こうとするものである。

例:新橋界隈の富士そば小諸そばも食べてみたけど美味しくなかった。結局、チェーン店系の安い蕎麦屋は美味しくないのだ。

これに対しては、サンプルが不十分である(2~3個の事例だけで一般論を導き出す、など)、一般化のし過ぎである(猫についての個別事例からすべての動物がそうであるという一般論を導き出す、など)、などの反論が可能であることが多い。

例:店によって味違うから新橋界隈の店だけで結論出すのは素人。しかもゆで太郎行ってないなら話にならない。

③因果関係は、Aという原因があるからBという結果が生じたのだ、と考えるものである。これに対しては、因果関係が逆である(消防車の出動回数が多いから火事が多い、など)、因果関係と相関関係の混同(英語ができるから年収が高い、など)、複数ある原因のうち特定の一部にのみ着目してしまう(水道水の成分がガンの原因である、など)、などの反論が可能であることが多い。

残ったメリット・デメリットに基づき決断する

以上のような反論を試みた結果、反論に耐えた(生き残った)メリットとデメリットに基づいて、決断をする。
正解はないので、現時点での最善解を導き出せばいい。それにあたっては、結論に至る道筋(メリットとデメリットを検討して結論を導き出したこと)が重要である。

賛否両論だとしても決めなければならない。

よくあるダメなパターンは、「賛否両論だから決めない」こと。
「いろいろな意見があってよくわからないから、とりあえずそのままにしておこう」と問題を先送りすることがありますが、実は情報をコントロールするような人はそれが狙いだったりします。

(p162)

 反論に耐えて生き残ったメリット・デメリットを天秤にかけて、判定する。

ディベート思考の考え方

・判定は「質×量×確率」で考える

(p229)

最後は主観で決める。価値観や哲学に関する問題について、天秤のどちら側を重視するのかは、自分で決めるしかない。

ディベート思考とは、客観を経て、主観で決断する方法です。

(p237)

決断に悩む若者にお勧め

本書は2011年に出版された本だが、今後も大いに活用できそうなので、意思決定や決断について悩みを持っている若い人にはお勧めである。